Side:Sを先に読む事をお勧めいたします。


Real intention -R-



ふと手を止めて耳を澄ませば、何一つ物音は聞こえないほどの、静けさ。
電力の消費を抑える為に、自分の頭上の電気以外はすべて付けていない。この静けさの一因もそれなのだろうか。
このタークスオフィスには、いつもの明るさはない。当然と言えば当然だろう。深夜零時の今、タークスのほとんどが家に帰るか、それ以外は任務中の者だ。
こうして睡魔に耐えながら報告書を書くのは自分だけ。
──レノは、いまだ3分の1しか埋まっていない報告書を前に、本日何度目かの溜息をついた。

先日まで行っていた任務は、同行していたソルジャーの失態により延期。長くて1週間弱だったのもを、2週間まで延ばされた。
この報告書は、始末書といったほうが妥当かもしれない。結局は自分が尻拭いをせねばならないという事実。
これに溜息をつかないでいられるだろうか。
ぼーっと考えていて、更に襲ってくる睡魔に、レノは頭をぶんぶんと横に振る。
軽く自分の頬をつねって、いざやろうとペンを持つが、すぐに頭は回らなくなった。

(そういえば……)

シスネは…今も任務中だろうか。
2週間前を境に、一度も連絡をしていない。あちらも暇ではないのだから突然なのだろうけど、どこか寂しさを感じていた。
こうして思いを馳せれば止まらない。ついに睡魔に負けたレノは、そのまま瞼を閉じていた。




身震いするほどの寒さにレノは目を覚ました。
ゆっくりとあたりを見回せば、オフィスに入った時となんら変わりはなかった。
レノは腕時計を見ようと、デスクに倒れこんだ上半身を重そうに起こす。
──ぱさり。
何か、自分にかかっていたものがおちた様な。レノは未だ覚醒しきっていない頭をかしげた。
ふと振り返れば、自分の下に落ちている黒の上着。見覚えのあるソレは、大きさなどからして明らかに彼女のものだった。

(シスネ──……)

心の中で彼女の名を呼び、そっと落ちた上着を手に取る。
肩幅からしてサイズが自分とはあっていないのこの上着を、彼女は気遣って掛けてくれたのだろうか。
…何故だろう?……──頬が、緩むのを感じた。
上着を片手に持って、ふらりとレノは立ち上がった。
ぼんやりとする思考。定まらない視界。
レノの体は安眠を求め、無意識に仮眠室へと足を進めていた。



相当の疲れと、徹夜続きのせいでレノの体はほぼ限界だった。
今にも倒れそうな体を、体が無意識に動かしている状態。

──そう、だから。
決してわざとだった訳ではない。
無意識に。…ほんとに、無意識だったんだ。

扉を開けて進んでいれば、視界に映った愛しい彼女。
それを見て、糸が。ぷつりと切れたように、はじけた。



目が覚めて初めに映ったのはいつも通り、天井────ではなく、さらりと伸びた、赤み帯びる髪、だった。
そして腕の下に感じる、ベッドとは思えない感触。
そろりそろりと顔を動かして、それを確かめる。
──見なければ良かった。一瞬そう思って体と思考が停止する。

「──ッ!?」

あろうことか眠るシスネの上にあった己の右腕を咄嗟に持ち上げ、壁ぎりぎりまで後ずさる。
ぎしり。とベッドがそれに悲鳴をあげた。

「…ん」

起きるか。そう思って一切音をたてぬ様体が硬直する。
シスネは身じろいだだけで、幸運な事に目は覚まさなかった。
はぁああ、と安堵の息を吐いて、シスネに背を向け状況を整理しようとするが、……やはり無理だった。
そして急激に紅く、熱くなりはじめる己の顔。
とっさに右手で頬を触ってみると、やっぱり常より熱かった。

「昨日は──……」
「レノ」

ぎくり。レノの丸まっていた背がぴん、と伸びる。
そっと、後ろを振り返れば。

いたずらっぽい笑みを浮かべた、愛しい彼女が、居た。





  *End*













寝ぼけた彼は、本能で動きます(^q^)
side:Sとside:Rで一話なので、短さは気にしないでください( ̄Д ̄;;