俺は変わった。そう言ったら信じる?
本当に変わったんだ。お前のおかげで、な。
大事なもの、初めてそれができたんだ。
掛け替えのない貴方。
ブリーフィングルームへと向かう2人の影。
ソルジャークラス1st.ザックス・フェアと、一般兵クラウド・ストライフである。
今回、統括であるラザードに任務内容の確認という事で呼び出されていた。
統括直々に確認する任務の内容。つまり、それは重要任務を意味する。
この2人が呼ばれるとなると、恐らく指揮官はザックス。
ザックスが指揮をとるのは久々の事で、正直緊張していた。
何故クラウドも一緒なのかはわからないが、ブリーフィングルームへと2人は入る。
「失礼します」
一言言い扉をくぐると、ラザードが椅子に悠然と座っていた。
「待っていたよ。早速だが今回の任務について手短に話そう。座りたまえ」
ラザードは顎で椅子を示すと、足を組んだ。
ザックスとクラウドは頭を下げてから椅子に座る。
「さて今回の任務だが、指揮官はザックス君になった。重要任務なので心しておくように。
その軍の殲滅だ。塵残さずその軍を消してもらう。神羅としてはあの反神羅がいるとそれそれは面倒なのでね。
敵はおよそ30。なかなか小細工な道具を使ってくる。数に惑わされないように。
今回は指揮官をザックス君に、クラウド君を含めた神羅兵9名、ソルジャー3rdが3名、ソルジャー2ndが2人。タークスが2人参加する事になっている。
こちらのほうが戦力としては少ないが、任務としては動員する人数が多い。
最近功をあげているザックス君を信じての任務だ。頑張りたまえ」
は、とザックスは敬礼する。
「クラウド君。先日の任務の功については聞いた。今回の任務でザックス君の傍に着き、得意の魔法を生かして援護してくれ」
クラウドもザックスと同じように敬礼した。
ブリーフィングルームを出て、ザックスはクラウドの背中をバシバシ叩いた。
「い、痛いよ……」
「よかったなぁクラウド! 統括直々の褒め言葉の様なもんだろ、あれ! これでソルジャーに一歩近づいたな!」
「あ……うん」
照れているのか少しうつむくクラウド。
「ザックスも、こんな大人数の指揮ってすごい…な……」
「へへへ。がんばらなきゃな、お互い」
「うん!」
「おーそーいーぞ、と」
タークスのレノとロッドは、八番街の集合場所にいた。
どうやらソルジャーと神羅一般兵と任務をともにこなすらしく、
休暇だったのにもかかわらず任務させられた挙句、ただいま集合時間1分過ぎ。
「遅いって……まだ1分しかたってませんけどね」
「長い! 長すぎるぞ、と」
それに今回の任務の指揮官がソルジャーということも苛々する。
なんでソルジャーなんかに従わなきゃいけないんだ。
しかも、だ。任務内容も同行メンバーもだれかわからない。人数さえ。
この任務が重要なのか否かさえもだ。
タークスを何だと思っているのだろう?
「タークスは雑用じゃありませんよ、と」
「悪い!」
自分で言うのもなんだが、ぐちぐちと言っていたらやっと来たようだ。
「遅いぞ、と! 誰だ指揮官!」
振り向きざまに電磁ロッドをビシ、と向ければ。
「えーと、すいませんでした……?」
両手をあげてこちらをみる男、ザックス。
「……はぁああ……お前かよ、と」
「え、何その溜息。俺じゃ嫌なのかよ」
「あー、ザックスー、よろしくなー」
タークスとザックスの間に繰り広げられる会話にザックスとともに来た者たちは唖然。
あまりタークスの評判はよくない。裏仕事をこなす冷徹な人間。そう思われているところがある。
なのに、だ。ウチの指揮官とベラベラ楽しそうに話す姿はそうは思えない。
ザックスはレノの頭を撫でまくった挙句殴られて。けどそんなレノも心底嫌がってはいないし。
いうならば、そう。……不思議な光景だった。
えーっと。今回の任務の指揮官のソルジャークラス1st.ザックス・フェア。
この人数からわかる様に重要任務だから、心して挑めよ。
んで、この赤毛のタークス様がレノで、こっちがロッドな。いい奴だから安心してくれ」
ザックスがさりげなくレノを抱き寄せる。レノの顔が紅潮。間もなくレノの蹴りがザックスの腹部にヒットした。
「い”…ッ……」
「さっさと任務終わらせてぇンだよ、こっちは」
「……すいません」
ザックスがダイレクトに蹴りがヒットした所をさすりながら謝り、ぱぱぱっとその場の全員に任務の内容を伝えた。
「殲滅ねぇ……。ソルジャー様に期待だな、と」
「おう!」
そしてザックスが計画していた作戦を伝えた。
「二手で行くか、それともまとまって行くか。どっちがいいと思う?」
ザックスが聞くと、ソルジャーの2ndと3rdが口ぐちに言い始める。
「二手のほうがいいんじゃないんですか? 逃げられる可能性もありますし」
「まとまって、のほうが。相手は30で道具を使ってくるんでしょう? 片方が負けたら終わりですよ」
「賛成。こっちは17で相手は30です。8,9で別れたらきついと思います」
「殲滅でしょ? 二手じゃないと絶対片方から逃げられますって」
言い争いになりそうな雰囲気にザックスはうーん、と唸る。
「タークスのお二人は?」
助け舟をもらおうとタークスの2人にも聞いてみるザックス。
「あー……突っ込めばいいだろ、と。片方の入口には遠距離専用の爆弾でも仕掛けとけ」
「俺らそういうのならやるけど」
爆弾──誰も考えなかった案にザックスは頷いた。
「じゃ、それで」
ぱぁっ、と明るくなるザックスの表情。ああ単純なんだな、と一同納得した。
まず、反神羅に気付かれない様、入口がせまいほうに爆弾を数か所設置。
侵入された事を気付かれない様まわりに目をくばり、全員内部へ侵入した。
「生け捕りは必要ないらしいから……あー、あれだ。…まぁ、誰も生かさなくていいらしい」
つまり皆殺しにしろという事だ。こういう事をザックスが嫌がるという事はレノがよくわかっている。
「まぁでも殺らなきゃ殺られるからな」
苦笑いを浮かべザックスは、準備が整うのを待って突入合図を送った。
突然流れ込んできた兵士に次々撃たれていく仲間を見て敵は唖然。
逃げ腰で応戦をはじめる敵の統率はとれていない。所詮寄せ集めの烏合の衆。
ザックスの指揮によって統率がとれた神羅とはわけが違った。
「クラウド! 離れんなよ!」
「うん!」
ザックスはロングソードで敵を斬り裂く。飛んできた手榴弾も剣で真っ二つにした。
ソルジャーとタークスが前線で暴れ、神羅兵が銃で撃つ。ここも壊滅するのは
敵が堕ちるのも時間の問題だと誰もが思っていた。
敵のとある一人がいつの間にか侵入したのとは別の出入り口へと走っている。
レノはそれを見て、設置していた爆弾を爆破した。
壁が崩れて、その出入り口は閉ざされる。「助けてくれ」必死の懇願も
「終わりだ」その一言ですぐに途絶えた。
殲滅の完了、逃がした形跡もない。任務完了であった。
「お疲れさま。皆、各々傷を癒してくれ」
終わった、そう皆が思い緊張の糸が切れる。その時だった。
ザックスは突然の殺気に気付く。
死んだはず、いや確認はしなかった死体であろうと思っていたモノは、手に何かを持って頭の上に手を振り上げていた。
こちらを睨んでいた。その視線は一番近くて、一人でいたレノに向けられていた。
瞬間、その何かは飛ぶ。
「──ッ!?」
誰よりも早く気がついたザックスは、すぐさま全力でレノのもとへと走り、レノをソルジャーのありったけの力で押し飛ばす。
しかし、ザックスが逃げる前に何かは地に落ち爆破した。
押し飛ばされた反動で体が悲鳴をあげている。爆破のせいで土煙がひどく何も見えない。
それはすぐはれ、目の前の光景にレノの顔はひきつった。
ザックスの上半身の服は破け、さらけ出された肌は、肌色ではなく真っ赤に染まっている。
「ざ、ざっく……す……?」
レノは自分の体の痛みを忘れザックスにふらり、と寄った。
「ぎゃははははっっ! ざまぁみろ! 俺様に逆らう」
銃声とともにその声はすぐさま途絶えた。レノが振り向きもせずに銃を向けていて、銃口からは煙がたっていた。
その銃声に思考が停止していた者たちもはっ、と気付き、急いでザックスに駆け寄る。
血にまみれた彼は、すでに意識を手放していた。
病院に運ばれたザックスはなんとか一命を取り留めたものの、意識はまだなかった。
包帯で至る所が巻かれたザックスは、病室のベットで眠っている。
レノはベッドの隣の丸椅子にすわり、ただ、ぼんやりとザックスを見ていた。
あの時、ザックスがレノを助けなければ、ザックスの様な体ではないレノはきっと死んでいただろう。
そして、レノがもっと周りを見ていれば、投げられる前に止められただろう。
すべての現況は自分だ。自分のせいでこうなった。自分がいなければ、こうはならなかったのだろうか。
「なんで、俺なんか助けたんだよ、と」
答えは突然、返ってこなかった。
それからレノはただひたすら自分を責めた。ふと、時計を見る。
自分の命の恩人かこの状態なのに、レノは次の任務があった。
絶対に行かなくてはならないと、ツォンに念念に念を押された重大任務。
ふらりとレノは、立ち上がった。
「ザックス。絶対、来るから……ごめん…な」
重大任務といわれていたその任務は、3日をかけて終了した。
すぐさまレノは、報告を同僚に任せると病院へと走った。
そして勢い良くザックスの病室のドアを開ける。
「あ、レノ?」
ザックスはレノに気付き、微笑んだ。
「ザックス……」
レノの体は勝手に動いていてザックスの胸に飛び込んでいた。
「うお!? レノ、どうした?」
「ザックス……ザックス…」
ただひたすらに名前を呼んだ。ザックスは何も言わず、ただレノの背をさすってやった。
「俺はもう大丈夫だからさ。泣くなって」
「泣いて……ない」
強がる彼は、いつもの彼だった。ザックスは安堵すると、その体をぎゅ、っと強く抱き締める。
「レノこそ大丈夫か? 俺思いっきり突き飛ばしちゃったからさ……」
「俺さまはンな事じゃ動じないぞ、と」」
「ははっ。だよなぁ」
そう笑う顔はすごくうれしそうで、幸せそうで。
「ザックス」
「ん?」
「ごめん」
元に戻ったかと思ったら、またマイナスなほうへと思考を向けるレノにザックスは呆れたように息を吐く。
彼は、自分の気持ちなど、知らないのだ。
「…ったくよ。好きだから助けただけ! 文句あるか」
強引だとは思ったがザックスがそう言うと、案の定レノは身を乗り上げ声をあげる。
「で、でも! それじゃ俺納得できないぞ、と!」
なんて我儘なんだろう、と自分でも思った。
「ん〜、じゃぁねぇ……」
ザックスは何かいい事思いついた子供の様な顔になり、レノを横目で見る。
「な、なんだよ、と」
「次仕事の休暇重なったら1日中ずーっとレノの傍にいたい。それで一緒にどっか行きたい。ダメ?」
「そんな事でいいのかよ、と」
「俺にとってはそんな事なんかじゃないんだな、これが」
レノとのデート。なんて言って無邪気に微笑むザックス。
ああ、本当、俺はこいつに浸っている。
やっぱりもう、離せないんだ。
「いいぞ、と。ずーっと、だからな?」
「もっちろん! じゃ、そうと決まったら、帰ろう」
「は? お前傷……」
「いやー、それがさ2日前には目覚めてたんだけどー、帰るって言ったらさ、カンゴフサンが絶対駄目! ってうるさいから居ただけよ」
ひょい、とベッドから降りて頭に巻かれていた包帯をスルスルと取り放る。
「ほんと、オマエは……」
「それが取り柄なんだからな。さ、帰ろ帰ろ」
そしてレノの手を掴み、最高の笑みを投げかける。
レノはその手を、ぎゅっと握り返した。
どうやらもうこの手は離せないらしい。
ずっと。ずっと。
この手を離さなくていいのか? この温もりを感じてていいのか?
───……なぁ、ザックス?
なんて馬鹿ップル(笑)