帰ったら抱きつこう。
帰ったら甘えよう。
そう考えるだけで、任務を続行する事ができた。


選択

 

疲れた。そんな無駄口をたたけないほど疲れていた。
体が重い。指揮官として、眠らず指揮を執り続けていたせいだろう。
任務を終えてから、疲れを表情にあらわにするザックスをみかねて、副として補助をしていた
ソルジャー2ndの一人がザックスに仮眠室を勧めた。
それをザックスは「大丈夫」と返し、ただいま帰宅中だ。
1週間、恋人に会っていない。
勿論返る場所は自宅ではなく恋人の家。
おぼつかない足取りで、やっとの事で恋人の家へと着いた。

「れ〜の〜」

そう言い、ばたりと玄関で倒れる。
ああ、やっと着いたのに、寝てしまいそうだ。

「!? ザックス?」

奥からばたばたと音をならし走ってくる、見えはしないがおそらく恋人。

「レーノー、ただいまー」
「おまえな……大丈夫かよ、と」

はぁ、とレノは溜息をつき、重たいザックスの体を抱えた。

「疲れた……」
「だろうな」

ぎゅぅ、抱きついてくるザックスにレノは苦笑する。

「おかえり」
「うん」

抱きかかえたまま言うと、にっこりと笑みを返してくる。
まったく、この笑みに、自分は弱いなぁ、とつくづく思う。

「しょうがねぇな……」

そのままレノはザックスを寝室へと連れていった。

 

 

レノに体をゆっくりベッドに下ろされた時、ベッドの軟かさに意識を手放しそうになった。
いけない。瞼をこじ開け、なんとか起きそうとする。
レノに会いたくて任務をさっさとおわらそうと、頑張っていたんだ。
こんなところで寝てしまっては努力が無駄になる。
今日レノが非番という事を知っていて、恐らく明日は仕事だろう。
今寝たら話せるのが明日の夜になる。それだけは避けたい。

「眠い……」
「寝りゃいいだろ、と」

子供じみたザックスを見てレノはまた苦笑する。

「レノー、好きだー……」
「頭おかしくなったか、と」

がば、と熊のようにザックスはレノに飛びつく。

「重たいぞ、と……」
「大好き」

懸命に意識を手放すまいとし、愛の言葉を連ねる。
だが、もう睡魔には勝てそうにない。

黙ったかと思うと、くぅくぅと寝息をたてはじめたザックスを見て、

レノは「ほんと、しょうがねぇ奴」と笑み、そっと布団をかけてやる。
髪をなでてやれば「うぅん……れの……」と唸り、迂闊にも可愛いと思ってしまった。

「はっ、……俺も惚れてんな……」

3年前の自分はまさか未来、大の大人をみて「可愛い」などと言っているとは思わないだろう。
抱きついて離さないザックスの手を握り、レノは微笑む。

「残念ながら明日はレノさん休日ですよ、と」

久しぶりだから。明日は、たっぷり甘えさせてやろう。